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「島の生活に欠かせない水は森が支えてくれている」 知花くららさんに聞く自然への思い

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2023.08.07

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知花くららさん

知花くららさん

  • 1982年生まれ、沖縄県出身。多数の女性ファッション誌でモデルを務めるほか、TV・ラジオ・CMでも活躍。上智大学を卒業した2006年にはミス・ユニバース世界大会で準グランプリに輝く。07年から国連世界食糧計画(WFP)のオフィシャルサポーターに就任し、国連世界食糧計画(WFP)日本親善大使を務めるなど約15年活動した。12年からは沖縄・慶留間島で子どもたちのための保養キャンプも主催。19年には歌集『はじまりは、恋』を刊行。祖父の家を建て直したいという思いから、京都芸術大学環境デザイン学科を21年卒業。23年4月~日本テレビ『DayDay.』へ水曜レギュラーとして月1回出演。2児の母。

元WFP(世界食糧計画)オフィシャルサポーターや日本親善大使を務めた経験があり、2021年には世界自然遺産大使に任命されるなど、SDGsに関する活動にも積極的に取り組んでいるモデルの知花くららさん。昨年念願の二級建築士試験に合格したことで、沖縄・慶留間(げるま)島にある、祖父から譲り受けた古家を再生させる計画も大きく動き始めました。沖縄で生まれ育ち、現在は海辺の街で家族と暮らす知花さんに、自然に関心を寄せる理由を聞きました。

手つかずの森や浜辺が残る慶留間島

―知花さんは現在、沖縄・慶良間(けらま)諸島にある島の一つ、慶留間島でおじいさまから譲り受けた築100年ほどの古い家屋を建て直しているそうですね。

「島の生活に欠かせない水は森が支えてくれている」 知花くららさんに聞く自然への思い

昨年末に二級建築士に合格して、本格的に再生に向けて動き始めました。デザインはまだ構想中ですが、住居用ではなくギャラリーのような、島の外から来た方にゆっくり時間を過ごしていただける場所にする予定です。100年経っているので、赤瓦には色あせや欠けもありますけれど、祖父が暮らした家ですし、生かせるものはできるだけ生かして、手つかずの自然が残る慶留間の風景になじむものにしたいと考えています。

―どうして自分で設計しようと思われたのでしょうか。

せっかく建て直すならピカピカのRC(鉄筋コンクリート)構造の建物ではなく、昔ながらの沖縄らしい赤い瓦屋根の木造平屋の味わいを生かしたいと思ったんです。そこで一念発起して、2019年に大学の建築学科へ進学しました。

建築の勉強を始めてから島の集落を歩くと、どの家も植栽や家屋の配置が似ているなど、一定のルールがあることに気がつきます。当時の大工さんのブームだったのかなとか、地理的な理由があってなのかなとか、思いを巡らせるのはとても楽しいです。

島の方のお話では、島中心部にある道は、海の神様の通り道だと信じられているのだとか。島のみなさんが大事にしていること、受け継がれてきた文化も尊重しながら、デザインを検討しています。

「島の生活に欠かせない水は森が支えてくれている」 知花くららさんに聞く自然への思い

―慶留間島は、どんな島ですか?

慶留間は、慶良間諸島の中でも人口が少ない、こぢんまりとした島です。一番の魅力は、やっぱり海。国立公園にも指定されている慶良間諸島の海は、私が生まれ育った那覇近郊の海よりもずっと透明度が高く、サンゴも豊かです。子どもたちは島の人たちとの交流も楽しいようで、GWに遊びに行ったときは、島の区長さんが飼っているヤギに毎朝エサをあげに行っていました。

周りを海に囲まれているため、島では昔から水を大切にしてきたそうです。建築を学んだ大学では、島の水をテーマに卒論を書いたのですが、古文書を読んだり、地元のおじいさんにお話を聞いたりしながら水脈をたどっていくと、慶留間の豊かな森に行きつきました。昔の地図では、民家にも、大切な祭礼の場所にも、必ず井戸があるんです。島の生活に欠かせない水を、森が支えてくれているのだと感じました。

海辺の街への移住で、自然がぐっと身近に

―知花さんはいつ頃から、何をきっかけに自然に関心を持つようになったのでしょうか。

沖縄出身で幼い頃から自然が身近だったというのももちろんあるのですが、WFPでの活動は自分の視点を変えるきっかけになりました。2007年から10年以上、世界中のさまざまな地域を巡った中でも特に印象に残ったのが、干ばつに見舞われたザンビアの農村です。当時ザンビアでは大規模な森林伐採が問題になっていたので、WFPの活動とあわせて森の現状も取材したところ、現地の方に怒られたんです。「あなたがたは自然を破壊するなと言うけれど、じゃあどうしてくれるの?」と。

「島の生活に欠かせない水は森が支えてくれている」 知花くららさんに聞く自然への思い

貧困に苦しむ地域には、森林伐採をしたり、国立公園内の動物をハントしたりすることで現金収入を得ている人がいます。生きていくためだと言われたら、外から来た人間が一方的に責め立てることはできないですよね。それまでは漠然と「自然を守るのは良いことだ」と思っていたけれど、繊細なテーマだからこそ、自然に対するまなざしとか、どんな視点を持つのかを個人で学ばなければいけないと強く感じました。

3年前に東京を離れ、今は海辺の街で暮らしていますが、私たち夫婦が大好きな海を入り口に、子どもたちも日常的に自然に親しんでくれたらいいなという期待も、移住の決め手の一つでした。自然に囲まれて過ごす時間が長くなるほど自然への意識は濃くなっていくでしょうし、私たち大人も自然から学べることはまだまだたくさんあると思うんです。

―住まいを移したことで、知花さんやご家族に何か変化はありましたか?

自然から離れた場所で暮らしていると、自分の暮らしが自然とどう結びついているか実感できないものですけれど、今はちょっとずつ、自然へと意識が向いてきているように感じます。季節の移り変わりとか、海の様子の違い、風の匂いの変化にも敏感になりました。虫が苦手だった上の子は、コップいっぱいにダンゴムシを集めてうれしそうに見せにくるほどたくましくなっちゃって……。「この辺りには木とかお花とか、虫さんが住むところがいっぱいあるんだねぇ」なんて話をしています。

「島の生活に欠かせない水は森が支えてくれている」 知花くららさんに聞く自然への思い

自然の摂理を目の当たりにできるのも、ここでの暮らしならではです。台風のあと、子どもたちが「なんかお魚臭い」というので外に出てみたら、浜辺に打ち上げられた魚がトンビに食べられていたとか、毎日観察していたツバメの巣から蛇のおなかが見えた直後にヒナが消えてしまって、子どもたちが「ツバメさんいないね」と不思議そうにしているとか。食べる・食べられる関係は自然の中では当たり前で、かわいそうに見えてもこれは残酷なことではないと早いうちから知ることができるのは、子どもたちにとって良い経験になるはずです。さまざまなものを観察して、目の前の小さな世界から興味を広げていってほしいですね。

その土地らしさが感じられる風景を未来にも

―2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録され、知花さんはPR活動を行う「世界自然遺産大使」に任命されました。

登録されたエリアは、生態系がものすごく豊かなんです。沖縄本島北部のやんばるの森には固有種のヤンバルクイナもいますし、マングローブ林では水の中に張った根の周りに水辺の生物たちの世界が広がっています。生物多様性を守っていくためにも、多くの方に沖縄の自然に興味を持っていただけたらうれしいです。

「島の生活に欠かせない水は森が支えてくれている」 知花くららさんに聞く自然への思い

―豊かな自然を守るために、取り組んでいることがあれば教えてください。

小さなことですけれど、子どもと自宅近くの浜辺で遊ぶときはいつもポリ袋を何枚か持っていきます。貝殻とか石とか、子どもたちが好きなものを入れるための袋と、プラスチックごみを拾う用の袋です。プラスチックごみはカラフルで、とても目立つんですよ。原色って、本来砂浜にはないはずの色だから。「どこから来たんだろうね。これは土には還らないんだよ」と声をかけながら、拾っています。子どもたちはまだ小さいので話の意味はよくわかってなさそうですが、自然の中にプラスチックごみがある違和感に気づけるようになってもらえたら、最初の一歩としては十分です。

子どもって、わざわざおもちゃを用意しなくても、自然の中から勝手に木の枝や石を拾ってきて遊び始めるものですよね。こういった幼い頃の楽しい記憶も、自然を大切にしたいという気持ちにつながっていくような気がしています。

―子どもたちに、どんな未来を残したいですか?

「島の生活に欠かせない水は森が支えてくれている」 知花くららさんに聞く自然への思い

沖縄では、やんばるの森やサンゴ礁を昔のような豊かな姿に戻そうという動きが盛んで、みなさん一生懸命取り組んでいます。私が発起人となって東日本大震災翌年の2012年から始めた、福島の子どもたちを慶留間島に招く保養キャンプが続けられるのも、安心して外で遊べる自然環境があるからこそ。自然の姿も街の景観も、その土地ならではの風や匂いが感じられるままに、未来へ残していきたいです。

文:渡部 麻衣子
写真:相馬 ミナ

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