朝日新聞デジタル
Presented by 王子ホールディングス

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

SPONSORED
INTERESTS
2023.10.31

|

王子ホールディングス イノベーション推進本部バイオケミカル研究センターの野口裕一さん(左)、新沼皐さん(右)

王子ホールディングス イノベーション推進本部バイオケミカル研究センターの野口裕一さん(左)、新沼皐さん(右)

「木で空を飛べる日」を目指して奮闘している研究者が王子ホールディングス(以下王子HD)にいます。「木で空を飛ぶ」とはそもそもどういうことなのでしょう。彼らの研究によって、未来の社会はどのように変わるのでしょうか。イノベーション推進本部バイオケミカル研究センターの野口裕一さん、新沼皐さんに話を聞きました。

航空業界の脱炭素化に不可欠な「SAF」

二人の研究者は今、木質由来の新素材「バイオエタノール」や「バイオマスプラスチック」の社会実装に向け、研究開発に取り組んでいます。

野口裕一さん:自分が開発に関わった燃料で飛ぶジェット機に乗れたら、感動でしょうね。初フライトには是非乗りたいです(笑)。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦
PROFILE
野口裕一

のぐち・ゆういち。2009年入社。37歳。王子HD イノベーション推進本部バイオケミカル研究センターでは、上級研究員としてメンバーを牽引。幼い頃から科学者になるのが夢だった。大学では化学工学を専攻し、効率性の高い生産手法を研究。森や木が大好きで、環境問題に興味があったことから入社。木材を活用した新素材、セルロースナノファイバーの研究を経て現職。

「木で空を飛べる日」が実現した時を想像し、野口さんはこんな感想を漏らしました。もともと森や木に高い関心があって入社したという野口さん。新沼さんも同様です。

新沼皐さん:島国で資源が少ない日本にとって大変貴重な森林資源をもっと活用する仕事がしたいとこの会社に入りました。今まさにそのような仕事に携わらせていただき、大きなやりがいを感じています。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦
PROFILE
新沼皐

にいぬま・こう。2019年入社。29歳。王子HD イノベーション推進本部バイオケミカル研究センター所属。学生時代から木材成分を微生物で処理して有価物に変換する研究に取り組む。日本でものづくりをするなら豊富な森林資源を活かすべきだと考え、そのための技術開発を志して入社。以来一貫して木材パルプに酵素や微生物を作用させて有価物を得る研究に従事。

そんな二人に「木で空を飛ぶ」ための研究とはどのようなものなのか、さっそく伺いました。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

野口さん:今、脱炭素社会に向けて航空業界でも二酸化炭素(CO2)削減の取り組みが議論されています。エンジンの効率化やジェット機の軽量化などさまざまな方法がありますが、そのなかでも燃焼時の二酸化炭素排出量が少ない「SAF(Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)」の利用が必須と言われています。そこで、SAF等に使われるエタノールを木材からつくり、量産することを目指した技術開発に私たちは取り組んでいるのです。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

現在、廃油や排ガス、藻類が排出する油など、さまざまなものからSAFをつくる研究開発が進められています。すでにSAFを使った飛行機が飛んでいる、といった話も耳にします。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

野口さん:現状は、全石油燃料の使用量に対して、SAFの使用量は1%に満たず、100%のSAFで飛行機を飛ばすことはまだまだ夢物語です。飛行機の脱炭素を実現するには、SAFの絶対量が圧倒的に足りていないのです。今後、あらゆる材料、製法を用いて大量にSAFを製造できる体制をつくっていかなくてはならないと言われています。そこで、国内外に約60万ha(東京都の約2.5倍以上)という広大な森林を保有し、大量の木材パルプを安定生産できる設備をもっている私たちは、この課題に挑戦すべきだと考えたのです。

木が透明な液体に。木材がエタノールになる過程

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

では木材からどのようにエタノールを製造するのでしょうか。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

新沼さん:エタノールというと化学品のような印象を受けるかもしれませんが、アルコールの一種です。日本酒やウイスキーも、エタノール。よって私たちがエタノールをつくる工程は、お酒づくりと似ています。まずは木材から精製したパルプに酵素を加え、糖液をつくります。その糖液を発酵させてエタノールをつくるのです。木が最終的に透明な液体になるのですが、製造途中で高級な日本酒のようないい香りがするときもあります。でもそういうときは、残念ながらたいてい失敗なんです(笑)。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

国土交通省は、2030年時点で日本のエアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置きかえるとの目標を掲げています。でも現時点では日本国内に、大規模なSAFの生産能力はありません。大量のSAFを安定供給できる生産体制を構築することが急務です。王子HDでは、2024年度後半の稼働に向け、現在のベンチプラントの100倍規模となるパイロットプラントを鳥取県米子に建設中です。ここで大量生産の課題を抽出、解決し、2030年度には年10万キロリットルの生産を目指しています。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

野口さん:とはいえ、誰もやったことがない規模での生産なのでさまざまな壁があります。環境によい燃料をつくるためにたくさんのエネルギーを消費したり、環境負荷を増やしたりしては無意味なので、全体の省エネを図る必要があります。持続的に運営するには、できる限りコストを下げ、ビジネスとして成立させなくてはなりません。そのためには工場の立地からタンクや配管などの設備のレイアウト、原材料はどこから仕入れ、製品はどこに出荷するかといった物流を含め、綿密に設計し、効率的な製造方法を追求しなくてはなりません。今、壁を一つひとつ乗り越えるため、建設チームと日々議論を重ねているところです。

新しい技術の実証実験と、それを社会に事業として定着させることの間には、大きな隔たりがあります。木質由来のエタノール製造を事業として普及させるうえでは、長年、日本中で大規模な製紙工場を建設・運営してきた王子HDの技術とノウハウが不可欠なのです。

糖と微生物の力でプラスチックなどをつくる「バイオものづくり」

脱炭素化の動きは、航空業界だけに止まりません。石油由来のプラスチックの削減も、とても重要な命題として誰もが知るところとなっており、世界的に石油由来のプラスチックから、バイオプラスチックへの転換が進んでいます。日本ではまだバイオプラスチックが使われた製品を日常的に目にする機会は少ないですが、王子HDでは木質由来の糖液からプラスチックの原料をつくる研究開発と実用化を進めています。

その製造プロセスについても伺いました。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

新沼さん:基本はエタノールの製造と似ているのですが、こちらはパルプから得られた糖液に、乳酸菌を加えて乳酸をつくり、ポリ乳酸へ変換します。ポリ乳酸は石油由来でないだけでなく、コンポスト条件下(※)で分解するので、プラスチックごみ問題の解決にも貢献できます。こちらも2027年度にパイロットプラントを稼働させ、2033年度には年間2万トンを製造することを目指しています。

※生ごみが分解され堆肥(たいひ)になる条件。自然の微生物の働きで作られる高温・高湿環境。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

このようなバイオ燃料やバイオプラスチックの開発自体は、すでに世界中で行われています。ただそれらの多くは、トウモロコシやサトウキビなどからつくるものが主流です。

野口さん:トウモロコシやサトウキビは食糧にもなるので、あまり資源や燃料として使いすぎると食糧危機につながります。栽培のために化学肥料や農業用水を大量に消費するケースもあります。そこで私たちは、時間はかかりますが比較的粗放に育成ができ、地球上に豊富にある木材を活用したバイオマスプラスチックやバイオ燃料の開発を目指しています。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

そんな同社のバイオケミカル事業の核となるのが、木材からつくる糖液。日本全体で生物由来の素材から微生物などの生物の力を活用して必要物質を生産する「バイオものづくり」を進める機運が高まっています。日本政府は「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」することを目標に、持続的な製造法で素材や資材をバイオ化した社会を掲げており、石油由来の製品をバイオマス由来のものへと転換するためのさまざまな研究開発が各分野で進んでいるのです。

野口さん:糖に微生物を加えると、さまざまな有価物をつくります。インクや塗料、タイヤや包装材、繊維、産業資材、肥料、農薬、食品、香料、医薬品など、これまで石油を原料につくっていたもののほとんどを、理論上、木質由来の糖からつくることができるのです。私たちはさまざまな業種のメーカーに糖を供給することで、ともに力を合わせて、日本のバイオものづくりの世界を築き上げたいと考えています。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

新沼さん:人間もそうですが、微生物は糖が大好物です。微生物に糖を食べさせてあげると、そのお礼にいろんなものをつくってくれるのです。微生物の種類によって生成物も異なります。それから、単に糖だけを与えるだけでは生産効率が低いため、おかずの要素となる窒素源やミネラルのレシピを考案し、彼らがいい仕事をしてくれるよう環境づくりをすることも、私の重要な仕事です。

森という資源をつくり、維持しながら、脱炭素社会を目指す

このように今、王子HDは木材からつくった糖で、社会のあらゆるものをつくるバイオものづくりに挑戦しています。それによって石油由来の製品を減らし、脱炭素社会を目指しています。同時にその背景には、CO2の吸収や土壌・水資源の保全、生物多様性の維持など、公益的な機能を併せもつ森林を適切に維持する狙いもあります。

野口さん:森林を持続的に維持するには、木を植え、育て、伐(き)り、再度植えるというサイクルを回す必要があります。木が使われなくなるとそのサイクルが崩れ、森林はどんどん荒廃していきます。一部の紙の需要が減ってきているなか、木材を資源や燃料として使うことは、豊かな森林を維持するうえでも非常に大事なことなのです。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

最後に二人に、今後の研究開発への思い、抱負を伺いました。

「木で空が飛べる日」を夢見る、研究者たちの挑戦

野口さん:木で空を飛び、木で車が走る。洋服も木からつくった繊維が当たり前になる。ひょっとしたら、木が食べ物になっているかもしれない。そんな未来への大転換に、仕事で携われることに毎日ワクワクしています。課題もたくさんありますが、一つひとつ解決し、「木で空を飛べる日」「木材を資源にあらゆるものがつくられる時代」を、1日も早く実現したいと考えています。

新沼さん:森林大国である日本らしいものづくりとして、木からつくられたプラスチックや燃料という驚きは、多くの方に共感いただけるのではないかと思っています。コンビニやスーパーで、木質由来の製品を誰もが当たり前に手に取っている未来を目指し、これからも研究開発に励んでまいります。

取材・文:関川隆
写真:山田秀隆

REACTION
SHARE

FOR YOU
あなたにおすすめの記事

INTERESTS
&Travel

永遠の都ローマへ 宗教美術が咲き誇る街に少年使節の足跡を訪ねて(イタリア・ラツィオ州 後編)

RECOMMEND
おすすめの記事

0
利用規約

&MEMBER(登録無料)としてログインすると
コメントを書き込めるようになります。