私の両親はかつて寿司(すし)屋を営んでいました、手間暇かけて食を届ける父と母の姿を幼少の頃から見ていたこともあり、料理はいつも身近な存在でした。そんな私が以前より挑戦したいと思っていたのが「味噌(みそ)づくり」。近年話題となっている発酵食品の奥深さや、時間をかけてじっくり熟成される味噌には、手間暇に込められたぬくもりや、個性ある味わいが宿っている気がしていたのです。そんな念願の味噌づくりをはじめて体験しました。

祖母の故郷である青ヶ島の「ひんぎゃの塩」
味噌づくりは食に関心の高い仲間たちと友人宅に集まりスタート。味噌は大豆、麴(こうじ)、塩をベースに仕込むのですが、今回は持参した祖母の故郷である青ヶ島の「ひんぎゃの塩」を使いました。かつて私のコラム第1回でもご紹介した東京都の青ヶ島は活火山で、地熱からの蒸気である「ひんぎゃ」と呼ばれる噴気孔が点在しています。この地熱を活用したひんぎゃの塩は、まろやかでほのかな甘みがあり、どこか包み込まれるようなやさしさを感じます。みなぎる天然の力と味噌とが混ざり合うことで、深くてやわらかな風味になってくれるはずと想像を巡らせました。

気心の知れた仲間とワイワイと語らいながらの味噌づくり。友人宅の飼い犬もリラックスしていました。じっくりとやわらかく煮えた大豆をマッシャーですりつぶして、麹とお塩を加えて混ぜていきます。大豆の香ばしい匂いに包まれて、ゆっくりと流れていく時間……。自分自身の手で味を育ててゆくということはとても贅沢(ぜいたく)な時間であるとしみじみ感じました。

材料をしっかりこねたら、ひと玉ずつコロコロと丸めて味噌玉に。この工程がまるで幼い頃の粘土遊びのようで、無心になってしまいました。丸めた味噌は最終的に容器に投げ入れるのですが「ぽすっ」という音も、なんだかユニークで愛らしい。パッケージに入れ暗くて涼しい場所に置いたら、あとはゆっくり待つだけ。

手のひらで育てる、わたしの味噌。少しずつ熟していく味噌の存在は、まるで、静かに息づく植物のよう。過ぎていく日々の中でも、気になり時々のぞき込んだりして、こうして寝かせ育んでいるものがあるという感覚は、私にとって癒やしの時間にもなっていた気がします。そして頃合いを見た半年後、あのとき仕込んだ味噌が、すっかり私の知らない顔になっていました。

深みのある色と、しっとりとした質感で見事に完成……! 熟成後には仲間たちと味噌を持ち寄り「お味噌の会」を開催しました。まずはそのまま新鮮なお野菜をお味噌ディップで楽しむと色も味わいも皆それぞれ全く違い、風味そのものに豊かな個性があふれていました。手のひらから始まったこのプロセスを、季節を越えて、誰かと分け合える喜び。味噌は、ただの調味料ではなく時間と手のぬくもりで育てるものだと実感しました。さぁ、これからどんな料理をしようかな? この味噌と一緒に自分らしいアイデアで秋の味覚を存分に楽しみたいと思います。


















