INTERVIEWER : 荻野清子

三谷幸喜監督の舞台・映画作品には欠かせない作曲家・ピアニストの荻野清子。三谷監督5年ぶりの新作映画「スオミの話をしよう」でも、ミステリアスな作品の世界への導入となるオープニング曲をはじめ、臨場感たっぷりな楽曲たちで奇想天外で謎めいたストーリーを盛り上げている。また、生楽器を豊富に使った演奏、古の名作映画を思わせるダイナミックなサウンドで、音楽家・荻野清子の世界を知ることができるアルバムとなっている。オリジナル・サウンドトラック完成までの意外な苦闘エピソードから、自らのルーツ、今後の夢まで、たっぷりと語っていただいた。是非、頭の中で「ヘルシンキ ヘルシンキ♪」と、音を鳴らしながら読んで欲しい。
取材・文:岡本貴之
「これを超える曲を作ってください」って
――「スオミの話をしよう」サントラのリリース、映画公開から1ヶ月ほど経ちましたが、反響はいかがですか?
荻野:やっぱりみなさん、“ヘルシンキ”がずっと頭に残るっていうことはよく言われますね。映画館を出てずっと歌ってるって言ってくれる人とか、私のことを知らない人がまわりで「ヘルシンキ~♪」とか歌ってくれたりするので(笑)、浸透率がいいんだなっていうのはすごく嬉しく思っています。
――たしかに “ヘルシンキ” はすごく印象に残りますもんね(笑)。1曲1曲の聴き応えがあるアルバムですが、どんなところから制作が始まったのでしょうか?
荻野:もちろん映画ありきなので、「こういう曲をこの場面で」っていう打ち合わせをして作っていくんですけど、今回は曲数が少ないので、ちょっと1枚のアルバムにするには足りないなって思ったんです。三谷さんの前作『記憶にございません!』(2019年)のときもやっぱり曲数が足りなくて、後からボーナストラックとしてピアノソロを何曲か入れたりしたんですけど、今回は作る段階で曲数が少ないとわかっていたから、1回三谷さんにボツにされた曲とかも入れてやれと思って(笑)。曲数を増やすために、そのボツになった曲もレコーディングしたんです。なので、うまくボーナストラックが増えてアルバムとしてとりあえず形になって良かったです。
――ボツになった曲っていうのはボーナストラックに入ってる“ザックリカメラサンバ”とかですか?
荻野:そうです。場面自体は残っているんですけど、ザックリカメラのお買い物シーンは最初サンバで作ったら、三谷さんに「いや、あそこはマーチの方がいいんだよ」と言われて、“ザックリカメラマーチ”っていう曲になったんです。でもせっかく作ったしもったいないなと思って入れました。ピアノソロの曲も、実際には他のシーンで使いたいと思って作ったんですけど、「そこは音楽がない方がいい」って言われてボツになったりした曲がボーナストラックとして入っているんです。
――三谷監督の作品では、そういうことはよくあるんですか?
荻野:作った曲がボツになるということは、あんまりなかったんですけど、今回とにかく厳しかったので(苦笑)。曲が少なかったのも、「セリフに集中させるために、ここぞという使いどころでしか曲を入れないんだ」というコンセプトを三谷さんが最初からお持ちだったようです。映像だけ見ると私は不安になって「もっと音があった方がいいんじゃないか」と思うシーンも、三谷さんは「いらない、いらない」って削られていくっていう形でした。
――確かに、あんまり音が鳴っていなくて、セリフが多めの舞台的な映画だなと思いました。
荻野:そうですね。とにかくセリフ劇なので、セリフをきちんと緊張感を持って聞かせたいということでした。音楽が入ることでそれが流れてしまわないようにしたいという一方で、音楽が入ることの緊張感みたいなものも大事にしたいから、逆に音がないシーンが長い方が音楽が入ってきたときのインパクトが強くなる。その計算をうまくするんだっていうことはおっしゃっていました。
――所謂劇伴というのは、映画制作のどの段階から関わっていくものなんですか?
荻野:三谷監督以外の映画の場合って、こんなに細かく「シーンのここからここに音楽を」とかって決めないで、もうすごくざっくりというか、例えば「誰々のテーマ」とか、「こういう感じの曲」っていうのをたくさん作って、むしろ音効さんが映像シーンに合わせてそれを編集してくださるんです。だから、「このシーンでこんな曲になるんだ」っていうのは、完成を観るまで知らないことが多かったりするんですよ。だけど三谷監督の場合は、完成した映像を観ながら打ち合わせをして、「ここからここまでの曲が欲しい」って、1曲1曲細かく打ち合わせをされるんです。なので、本当にその通りに作るっていう感じです。
――その中で、先ほどおっしゃったように、「これはちょっとイメージが違うから、こういう曲にしてほしい」とか、三谷監督の中でしっかり音像があるというか。
荻野:これは毎回そうなんですけど、三谷監督は最初に全部、映像に既存の音楽を仮につけるんですよ。それで、「こんな感じなんだけど、これと同じじゃ駄目です。これを超える曲を作ってください」って、鬼のようなことを言うんです(笑)。
――ははははは(笑)。最初のハードルがめちゃくちゃ高いんですね。楽曲は、ビッグバンドジャズ調の曲から、ブギとかブルースっぽさがあったりしますが、最初に三谷監督が仮につけていた曲も、そういうオーセンティックな音楽だったわけですか。
荻野:そうですね。「ジャズのイメージはあります」ってすごく言われました。そもそも“ヘルシンキ”っていう曲は、ミュージカルの『シカゴ』のナンバー「ロキシー」のイメージだっていうのは最初から言われていたので。ビッグバンド的なブラスの響きがあったり、ストリングスを効かせるいわゆる往年の洋画っぽい感じの音楽も入れたいっていう、具体的なイメージがあったんです。
――なるほど、長澤まさみさんをロキシーに見立てているということですね。“ヘルシンキ”だけ歌が入っていますが、作詞は三谷監督自ら手掛けています。何も情報を入れずに“ヘルシンキ”ってタイトルだけ見ると、すごく謎めいた感じですけど、歌詞について説明を受けたりしたのでしょうか。
荻野:いや、何もないですね(笑)。もう台本に書かれている言葉に曲をつけるっていう感じで(実際に台本を開きながら)。
――あ、実際にセリフの中に曲の歌詞が全部書かれてますね。
荻野:そうなんです。「スオミたちによるソング&ダンス」って書いてあります。「ボーイズ!」って言うところは、本当に『シカゴ』でロキシーが言うセリフだったので、台本を読んだときに爆笑しました(笑)。
――オマージュということですね(笑)。タイトルの意味とかは尋ねなかったですか?
荻野:まあそれは台本を読んでいけばわかるので。最後にこうやって歌で落とすというか、ずっと「スオミ、スオミ(フィンランド語でフィンランドのこと)」って言っていて、最終的にすごいオチだなって思いながら観ました。


























































































































































































































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