目次

  1. 政府の2025年度補正予算の概要
  2. 成長投資と生産性向上を促す大規模な財政支援
    1. 中小企業成長加速化補助金の拡充【3400億円の内数】
    2. 賃上げに向けた大規模成長投資の促進【4121億円】
    3. 生産性向上・省⼒化投資支援 デジタル化・AI導入補助金も
    4. 革新的製品開発や新事業進出の支援【既存基金の活用で1200億円規模】
    5. 省力化投資の集中的な推進【既存基金の活用で1800億円規模】
    6. 海外ビジネス展開支援等事業【112億円】
  3. 伴走支援の体制強化と取引適正化の徹底
    1. プッシュ型による伴走支援体制の強化【376億円の内数】
    2. 中小企業活性化・事業承継総合支援事業【74億円】
    3. 認定支援機関による経営改善計画策定支援事業【101億円】
    4. 中小企業取引対策事業【7.6億円】
  4. 資金繰り支援と金融基盤の強化
    1. 信用保証制度におけるメニュー新設等【152億円】
    2. 日本政策金融公庫等による資金繰り支援事業【40億円】
  5. 環境変化への対応と被災地の復興支援
    1. なりわい再建支援等による被災地域の復興支援【268億円】
    2. 局地激甚災害(局激)への支援拡充等【53億円の内数】
    3. エネルギー・物価高への対応とSSネットワークの維持

 政府の2025年度の補正予算案によると、一般会計の歳出は18.3兆円で、前年から4兆円以上増えました。費用をまかなうため、新たに国債を11.7兆円発行します。経産省によると、中小企業・小規模事業者等関連予算は総額8364億円で、既存基金の活用を含め1兆円を上回る規模となります。

 中小企業向け予算を、テーマごとに整理しました。

 中小企業が持続的な賃上げをするために、政府は設備投資やデジタル化を通じた生産性の向上を支援しようとしています。補正予算は、企業の成長段階に応じた補助金と大規模投資支援を組み合わせています。

 中小企業成長加速化補助金とは、将来の売上高100億円を目指して、大胆な投資を進めようとする中小企業者の取組を支援することを目的とした補助金です。

 政府は、地域の雇用を支える中堅・中小企業、特に売上高100億円を超える企業(100億企業)の創出を強く志向しています。補正予算案では拡充を予定しており、100億企業づくりに向けて、財政支援を実施します。

 地域の雇用を支える中堅・中小(100億宣言企業等)・スタートアップ企業が、人手不足等の課題に対応し、成長するための大規模投資を促進することで、地方でも持続的な賃上げを目指します。

 大規模成長投資支援には、総額4121億円を充て、新たに基金として2000億円を措置します(既存分2121億円)。特に、飛躍的な成長を志向する「100億宣言企業」向けに、このうち1000億円程度を確保し、大規模投資を重点的に支援します。

 さらに、大企業から経営人材(転籍、兼業、副業、出向)を受け入れた場合に、企業に対して給付金を支給する制度を導入します。これは、地方の中小企業が高度な経営ノウハウを持つ人材を確保し、経営体制を強化することを目的とします。

 物価高や米国関税による貿易環境の変化等に対応し、「稼ぐ力」を強化するためとする、生産性向上・省⼒化投資支援をテーマとした補助金も継続予定です。生産性革命推進事業のうち、デジタル化・AI導入補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金を3400億円の内数として盛り込んでいます。

 デジタル化や、販路開拓、事業承継・M&Aに関する設備投資等を後押しするとともに、物価高や米国関税影響を踏まえ、重点的なハンズオン支援をはじめとした総合的なソフト支援等を予定しています。

 中小企業等が革新的な製品やサービスを開発し、海外を含む新しい市場へ進出する際に必要となる設備投資等を、既存基金を活用して支援します。

 人手不足に対応するため、省力化投資を支援します。業種別の「省力化投資促進プラン」を踏まえ、従業員規模ごとの補助上限額を見直すなど、中小企業が業態に合わせた効率的な投資を実施できるよう支援を進めます。

 米国関税の影響を受ける中堅・中小企業の販路多角化等に向けて、日本貿易振興機構(ジェトロ)が支援を強化します。具体的には、商社OBなどの専門家による伴走支援、越境EC活用支援、見本市出展支援などをします。

海外ビジネス展開支援等事業

 ジェトロは、海外拠点の新設・増員を行い、国内の地方にも海外展開の知見を持つ専門家を新たに配置することで、地方の中小企業の海外展開を後押しします。

 国は、補助金による支援にとどまらず、中小企業が持続的に収益力を高めていくための経営基盤の強化と、適正な取引環境の整備を重視します。

 中小企業が、最低賃金引き上げ、省力化投資、物価高騰、インボイス対応などの事業環境変化に適切に対応できるよう、専門家による相談や各種支援施策の活用を促します。

 このため、商工会・商工会議所、認定支援機関、よろず支援拠点、活性化協議会、承継センターなどの支援機関の体制を強化します。

 特に、支援機関の連携を通じた地方自治体による、課題解決までの一貫支援を行う「プッシュ型の伴走支援モデル」をつくります。地方自治体が最低賃金の引き上げに伴う小規模事業者への伴走支援等を講じる場合、国がその費用を支援することで、地域での伴走支援の強化を目指します。

 地域の経済と雇用の基盤を守るため、財務上の問題を抱える中小企業等に対し、収益力改善、事業再生、再チャレンジの支援をします。また、後継者不在の中小企業等に対する事業承継・引継ぎの支援もします。

中小企業活性化・事業承継総合支援事業

 中小企業活性化協議会を通じて、認定経営革新等支援機関である民間専門家が中小企業等に対して行う経営改善計画の策定支援や伴走支援に関する費用の一部を国が負担することで、経営改善の取り組みを支援します。

 中小企業が物価高騰分を適切に価格に転嫁し、「稼ぐ力」を確保できるよう、取引適正化を最重要課題の一つとして掲げています。そのために、2026年1月に施行される「中小受託取引適正化法」および「受託中小企業振興法」の周知徹底と厳正な執行を予定しています。

中小企業取引対策事業

 そのほか、下請Gメンによる取引実態調査や、価格交渉促進月間のフォローアップ調査等を実施し、発注者への指導を徹底します。

 受注側の中小企業を対象とした価格交渉力向上のための情報発信やアンケート調査をします。

 国や地方自治体自身が、民間への請負契約等の単価を見直し、物価上昇を踏まえた予定価格の確保や、最低制限価格制度・低入札価格調査制度の基準等の見直しをします。

 中小企業が不安定な経済情勢下で安定的な資金調達を行い、経営改善や事業再生に取り組めるよう、信用補完制度を拡充します。

 経営改善や事業再生に取り組む中小企業や、民間金融機関やモニタリング能力を有する者との連携強化を行う中小企業等の借入に対して、信用保証協会が保証を行います。国は、保証料の一部を補助し、中小企業の借入を支援します。

中小企業信用補完制度関連補助事業

 外交・安全保障環境の変化に伴い米国関税措置の影響を受けた事業者等に対して、日本政策金融公庫等が資金繰り支援を実施します。

日本政策金融公庫による資金繰り支援

 物価高騰や災害の激甚化など、中小企業を取り巻くリスクに対応するための支援も重点的に盛り込まれています。

 令和6年能登半島地震、令和3年・令和4年福島県沖地震、令和2年7月豪雨により被害を受けた中小企業等が、施設や設備の復旧・復興を行うための支援を実施します。

 特に、能登半島地震等により大きな被害を受けた地域の伝統的工芸品の事業者等に対し、産地活性化に向けた取り組みを支援し、早期の復興を促します【1.1億円】。

伝統的工芸品産業災害復興事業費

 局地激甚災害として指定された地域の中小企業等に対し、復旧支援を拡充します。

 具体的には、地方自治体が局激指定や災害救助法適用を受けた災害からの復旧支援(施設・設備の復旧事業)を講じる場合に、その費用を支援する自治体連携補助金の補助上限を引き上げます。これにより、被災地域の速やかな復旧を実現します。

 物価高への対応として、電気・ガス料金の負担軽減支援(5296億円)や燃料油価格激変緩和対策事業を引き続き実施します。

 また、中小・小規模なサービスステーション(SS)の事業継続支援として、SSネットワーク維持・強化支援事業費補助金(160億円)を計上しました。

SS(サービスステーション)ネットワーク維持・強化支援事業費補助金

 SS過疎地重点支援を含むSSネットワークの維持に資する設備投資を支援するほか、環境・安全等対策基金事業【30億円】として、当分の間税率廃止に伴う影響を受ける中小・小規模事業者に対し、資金繰りの悪化に対して直接対応するため、運転資金等を金融機関から借り入れた場合の利息の一部について支援をします。

当分の間税率廃止に伴い影響のあるSSへの金融支援

 さらに、省エネの専門家が中小企業等のエネルギー使用状況を分析し、運用改善や設備投資等を提案するために必要な経費を補助する中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費【33億円】など、エネルギー利用の最適化を支援する措置も含まれています。